ツアーファイナルズに見た「日本の確かな成長」と「海外勢の追い上げ」

バドミントン

5種目中、4種目の決勝戦にズラリと日本の選手が並んだ。16日に閉幕した「BWFワールドツアーファイナルズ」(中国、広州)の話だ。壮観なラインナップは、近年の日本バドミントン界の勢いを示すものだったが、終わってみれば、優勝は1種目のみ。5種目中、3種目は開催国である中国が優勝トロフィーを獲得した。来年(2019年)5月からは2020年東京五輪の出場権獲得レースが行われる。日本の確かな成長と、五輪に向けて調子を上げてくるであろう外国勢の脅威を感じられる大会だった。

日本勢で頂点に立ったのは、女子ダブルスの高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)だった。強豪が偏ったグループに入ったが、全勝で4年ぶり2度目の優勝を飾った。フットワークのスピードが良い中国ペア、球回しとレシーブ力のあるインドネシアペア、長身で強打が武器の韓国ペアとタイプの違う相手を試合の中で完全に攻略する強い勝ち方だった。

世界選手権の女王として出場した松本麻佑、永原和可那組(北都銀行)は、グループリーグ(以下、GL)を全勝で突破したが、準決勝で韓国ペアとの再戦に敗れた。相手がやり方を変えてくるときの対応力は、まだ課題。貴重な経験を持ち帰った。ツアーランク2位、世界ランク1位でありながら出場権を得られなかった福島由紀、廣田彩花組(岐阜トリッキーパンダース)を含めて日本女子ダブルスの選手層は厚いが、日本代表の朴柱奉ヘッドコーチが大会前に話したとおり、他国のトップとはきん差。高橋は海外メディアの取材に対し「海外のペアは、五輪に向けてもっと強くなると思っている。日本だけが強いなどと思わず、もっと強くなっていきたい」と話していた。

ここまでの3種目は、1年を通じて好成績を残しており、あとはメダル獲得の確実性や、頂点を取り切る強さを求める次元にある。一方、男子ダブルスと混合ダブルスは、メダル争いに食い込む可能性を広げ始めた。男子ダブルスは、遠藤大由、渡辺勇大(日本ユニシス)が準優勝。遠藤は、リオデジャネイロ五輪まで組んだ早川賢一とのペアで出場経験があるが、渡辺とのペアでは初出場で決勝まで勝ち進み「このパフォーマンスなら、この成績が付いてくるということなら、可能性ややりがいがある。今大会は、レシーブが良かった。これを最低限にすれば、上の選手とやるときに面白くなるんじゃないかと思う」と、収穫を得た。同種目では園田啓悟、嘉村健士組(トナミ運輸)が世界選手権で銀メダルを獲得している。今大会と世界選手権を優勝した「ツインタワー」リ・ジンフイ、リュウ組(中国)と、驚異的なレシーブ力を誇るマーカス・フェルナンディ・ギデオン、ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ組(インドネシア)の2強は揺るがないが、日本は2ペアで追いかける体制が整った。

混合ダブルスの渡辺、東野有紗組(日本ユニシス)は、GLで1勝2敗と負け越したが、勝利ゲーム数の差によって2位で準決勝に進出。優勝ペアのワン・イリュ、ファン・ドンピン組(中国)に2度敗れたが、準決勝では1ゲームを制して意地を見せた。渡辺は「ドローに恵まれて、このランク(世界3位)にいるけど、実力的にはまだまだだと思い知らされて悔しい。上を見過ぎず、まず勝てる相手に取りこぼしをしないこと。上を食っていくのは、その次のイメージ」と悔しさを噛み締めながら、現実を直視。一歩一歩の姿勢を強調した。全英オープン優勝のサプライズに始まり、香港オープン制覇で確実な成長を示した2人は、日本代表の課題種目を世界で戦えるところまで一気に押し上げた。五輪レースを通じて、上位破りの突破口が見えてくることを期待したいところだ。

東京五輪の金メダル有力候補となる男子シングルス、女子ダブルス。混戦の中での頂点を狙う位置にある女子シングルス。トップとの確実な競争力を持つ男子ダブルスに、躍進著しい混合ダブルス。いずれも確実な成長が見られる。一方、今大会でも終わってみれば中国が3種目で優勝するなど、他国も意地を見せており、レベルアップや日本対策の強化が十分に予想される。2019年5月から始まる五輪レースで、東京五輪への期待をさらに大きなものにできるか。新シーズンの戦いが、今から楽しみだ。

女子ダブルスと並んで金メダルが有力視されていた男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)は、決勝戦で中国の若きエース石宇奇(シー・ユーチー)に思わぬ完敗を喫した。世界選手権の決勝戦を含めて過去3戦全勝していたが、得意としているネット前への球を完全に封じられ、最初からスピードを上げて来た相手の強打、カットスマッシュの打ち分けに圧倒された。石宇奇は「今までは相手のスタイルが分からず、対応できなかったが、今回は自分の戦略を徹底できた」と話し、桃田は「相手のタッチが速く、研究されていると感じた。完敗だと思う」と肩を落とした。今季、日本代表に復帰して世界選手権を優勝、世界ランク1位に上り詰めた桃田だが、追われる立場での難しさが見えて来た。敗れたとはいえ、いまだ世界1位の評価は変わらないが「消極的になった。プレッシャーがかかる場面でも自分のプレーができるように対策を考えたい」と敗戦を糧に絶対王者となるべく、さらなる成長を誓った。

女子シングルスは、奥原希望(日本ユニシス)が銀メダルを獲得した。決勝では、好敵手のプサルラ.V.シンドゥ(インド)に敗れたが、大会を通じて守備をベースにした対応力の高さを見せた。準決勝では、2週間前の全日本総合選手権で敗れた山口茜(再春館製薬所)への雪辱も果たした。所属する日本ユニシスを年内で退社することを発表済みで、決勝後には「来年から結果が求められる中、新しい環境でどこまでどん欲になれるか楽しみ」と五輪レースへの意気込みを示した。山口も大会を通じて、攻め急ぐ課題の克服に取り組みながらゲームを展開し「来年につながる大会になった」と手ごたえを得ていた。日本が誇る奥原と山口のダブルエースは、ともに世界トップレベルにあるが、この種目は混戦模様だ。今大会は、世界選手権優勝のキャロリーナ・マリン(スペイン)が欠場。山口が戦った世界ランク1位の戴資穎(タイ・ツーイン=台湾)も試合途中で棄権し、本領発揮はならなかった。五輪レースでは、マリン、戴資穎、シンドゥと日本勢の直接対決がどのような流れを生んでいくか注目される。

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